太陽光は春夏秋冬や緯度で仰角が変わり、朝昼夕の時間により方位角が時々刻々と変化します。また、波長帯も紫外の短波長域から赤外の長波長域に至るまで広い波長スペクトルを有しているため、ホログラムでこれら全てを効率的に採光できるようにするのが究極のゴールです。
そこで、露光時の波面を変化させた物体光を用いることで、採光する波長帯域を広げるとともに、採光可能な仰角や方位角を広げることが出来ないかと考え、実験により検討しました。
一方向に光を拡散させるレンチキュラーレンズを挿入して露光した L-typeと、全方向に球面波的に拡散する波面を作る対物レンズを挿入した O-typeという、2つの波面のタイプで露光したホログラムによる採光実験の観察しました。N-typeでは露光に使用した緑色の波長のみが採光されていましたが、L-typeとO-type においては、青色から赤色までの可視域の広い波長帯域の光が採光されて出射されることが確認できます。また、対物レンズを挿入したO-typeにおいては、出射光に横方向の広がりも確認できます。これは、全方向に球面波的に拡散する波面を用いて露光することで、採光可能な仰角や方位角も増す可能性があることも示唆しています。
採光された波長帯域を解析するため、分光光度計を使用して透過光の分光特性を測定し比較評価しました。平行光同士の露光となるN-typeにおいては、露光した波長付近の緑の波長成分だけ透過率が低下しており、低下した波長成分はガラス内部に採光されていると考えられます。これに対して、仰角方向の一方向に拡散する波面を物体光としたL-type
においては、広い波長帯域に渡って透過率が減衰しており、より多くの波長の光を採光していることが分かりました。
ここで注目すべきは、L-type においてもホログラムが緑色(波長 532nm)の単色レーザーだけで露光形成されているという点です。これは、Bragg-degeneracyの効果によって採光の広波長帯域化と入射角度の広角化が成されたと考えられます。
以上の実験結果と解析結果から、Holo-Windowの露光設計においては、波面を適切に制御することで、採光の広波長帯域化と入射角度の広角化を実現することが可能であることが確認できました。
N-typeとL-typeのホログラムにおける分光透過率特性